会社の中で、上司や会社の方向性に違和感を感じていても、なかなか言い出せずにモヤモヤしてしまう。
それは同調圧力の強い、ムラ社会的な雰囲気ではないでしょうか。
そんなムラ社会なんて飛び出して転職するなり、海外進出するなりすればいいと頭ではわかってはいるものの、なかなか行動に移すことは難しい…。
年齢を重ねれば重ねるほど、自分が今いるムラから出ることに不安や億劫さを感じてしまいます。
そんな悩みを、政治家として活動していた経験もあり、現在タレント・経営者として活動をしている杉村太蔵さんにぶつけてみました。杉村さんは「素晴らしい歯車になれ」と言います。その意味とは・・・?
プロフィール:杉村太蔵(すぎむら たいぞう)
派遣社員から外資系証券会社勤務を経て、2005年9月総選挙で最年少当選を果たす。厚生労働委員会、決算行政監視委員会に所属。労働問題を専門に、特にニート・フリーター問題など若年者雇用の環境改善に尽力。現在、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアで活動する一方、自身の経験を交えながら語る政治・経済をテーマとした講演活動を全国で行う。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程 所定単位取得退学。北海道音威子府村と人口減少問題対策・過疎地問題について共同研究を行っている。KADOKAWAより、「"投資""副業"お金の基本がゼロからわかる 稼ぎ方革命」を上梓。
ムラ社会の雰囲気に悩んでいる時間が無駄。自分だけで解決できない問題もある
ー日本的なムラ社会は同調圧力が強いと感じています。杉村さんは組織で生きる中でムラ社会の雰囲気を感じたことはありますか?
お話されているムラ社会とは、つまりみんなが一定の方向性を向いて一致団結する雰囲気ということでしょうか。その意味でのムラの雰囲気は感じるというか、当たり前のことですよね。同調圧力が苦しいのは、組織に所属しているのであれば仕方ないでしょう。上の人が決めた方向性に対して実行していくのが組織の一員です。
ムラ社会の同調圧力が苦しくて悩んでいるのであれば、悩んでいる時間が無駄です。自分で解決できない問題を解決しようとしているんだから。問題には自分で解決できることと解決できないことがあるので、それを見極めることも重要です。そして周りの人を変えることってとても難しいんですよ。だったら、悩んでいるあなたが変わったほうがはやい。
ー杉村さんは組織の方向性に違和感を感じたことはありますか?
そりゃぁ生きていれば違和感はありますよ。でもその違和感は消化しなきゃいけない。
ーどのように消化されていますか?
あんまり深く考えすぎないことも大事ですよね。もしかしたら深く考えすぎちゃっているのではないでしょうか?
あとは、違和感に対して積極的すぎるのも問題があると思います。番組づくりを例に挙げると、番組には番組の方向性があります。番組作りで僕が「このニュースをもっと取り上げたほうがいい」とか「この人をキャスティングしたほうがいい」とか言って積極的すぎるのは越権行為ですよね。僕の役割は定められたテーマに対してコメントすることなので。
あなたが悩んでいる「ムラ社会の同調圧力が強い」ことは、果たして自分に与えられた職務の範囲内ですか?と考えてみてください。組織の中で自分に与えられた役割はなんなのか、何を求められているのかをもっと考えてみるといいでしょう。
また、僕が日本の同調圧力が強いと思うのは、例えば全員高校に行かなければならないかってことです。
これからは、社会貢献しようという情熱に基づく行動が求められる
ーどういうお考えでしょうか?くわしく教えてください。
学歴重視も同調圧力のひとつだと思うんです。義務教育は中学で終わりですよね。中学校を卒業した時点から働きに出てもいいし、高校3年間の授業料があれば海外を周って22歳くらいから高校に行ってもいいと思うんです。
もっといろんな生き方があっていいし、多様な生き方は今後の社会でもっと求められることではないでしょうか。
いいと言われる大学に入っていいとされる会社に入ることで生活の安定が保障される。その考え方は私利私欲で、それに基づく学歴は本当に意味がないと思うんです。これから求められるものは、「社会をよりよくしよう」「自分の力で社会に貢献しよう」「もっと社会の役にたちたい」というパッションに基づくものだと思うんです。
そういう情熱があるかないかというのは、ムラ社会における同調圧力に屈せずに生きる大事なポイントです。生活の安定が欲しいからと行って保守・安定の守備力に走らないことが、これからの社会で生きるうえで大切なことだと思います。
簡単にやりたいことは実現しない。それは常識的なこと
ー杉村さんは証券会社でサラリーマン、国会議員などさまざまな組織で働いてこられたご経験があります。政治の世界に入って、金融の組織と違う点はありましたか?
そんなにないですよ。そりゃ、小さなルールの違いはもちろんありますが、言論の自由もありますし、大きな違いは感じませんでした。みんなで議論をして、決まったことにはみんなで従う。それは当たり前のことで、組織が違うからといって大きくは変わらないです。
あとは、自分がこれからやりたいことがそう簡単に実現できるケースは本当に少ないと自覚すること。それは、民主主義でいろんな意見があるから当然のことですよね。それを理解できていると、ラクに生きやすいと思います。
ーやりたいことの実現が想像以上に難しいことに、若い頃は気づきにくい人もいると思います。杉村さんはいつ頃から自覚されていましたか?
いやもうそれは常識ですよね。かなり早い段階から組織とはそういうものだと自覚していましたよ。そもそも自分自身にそんなに力があるわけではないと、あんまり自分の力を過信してないっていうところも大事ですよね。
ー今までのキャリアを築かれてきた中で、それぞれの組織のルールの中で杉村さんが意識していたことはありますか?
組織のルールを守ること、コンプライアンスを遵守すること。これにつきますね。
組織の中で実現したいと思う「やりたいこと」はなかった
ー組織のルールの中で自分のやりたいことを実現するのは難しいでしょうか?
僕の場合は、組織の中でやりたいことはありませんでした。今HARETEという屋台村を経営して自分のやりたいことを実現していますが、それは経営者ですから。番組に出演しても、やりたいことができているとは思ってはいないです。
本当にやりたいことがあるんだったら会社を作って経営することが一番です。そうではなく、組織の一員として働くのであれば、言い方は厳しく感じるかもしれませんが、やっぱり立場をわきまえなければならない。
もしやりたいことがあるんだったら、お金を借りる等で資金を集め、人材という仲間も集めて社長になる。そのためには信用が必要ですが、それもクリアして初めてやりたいことができます。
ー信用・信頼を集めるためになにか工夫されたことはありますか?
そもそも信頼って、これをやったら信頼されるというものではありません。毎日毎日の積み重ねが信頼です。僕が一番大事にしているのは、コンプライアンス・法令順守。つまり、ルールをしっかりと守ることはすごく大事です。あとはハラスメントをしないなども含みますが、とにかく基本を大事にすることはとても重要です。
与えられた仕事の役割をしっかりと果たしていれば十分
ー昨今「自分らしさ」を出そうという風潮もあり、組織のルールの中で自分らしさをどう出せばいいのかと悩んでいる人もいます。どのように考えればラクになりますか?
自分らしさで悩んでいること自体が時間の無駄。組織の中でその人らしさが出ているな、自分らしく働けているなという評価軸なんてないですよね。与えられた仕事をしっかりとやっていればそれで十分です。
与えられた役割の中で成果なり結果なりを出すことが一番です。まずは言われたことをしっかりとやることが大事でしょう。
やりたいことがあれば趣味などでもできますよね。やりたい仕事ができるなんてほんの一握りなんだから、まずはそれを自覚すること。それでもやりたければ、行動を起こすこと。会社を辞めて社長になることがいいでしょう。
ただ、難しいことはあなたが人を採用したとして、その社員がまた「やりたいことができない」と悩むかもしれません。それでは同じ悩みを押し付けることになるから、この問題は解決しないんです。だから、「やりたいことが仕事でできない」という悩みは、そもそも悩むことではないんです。
ー杉村さんのように起業で行動をすぐに起こせればいいと思うのですが、なかなかすぐにはできない人も多いと思います。そういったモヤモヤを抱えながら組織の中で生きるにはどうしたらいいと思いますか?
さきほどもお話した理由から、そのモヤモヤは解消できないので、モヤモヤを抱えながら生きるしかないですよね。組織の一員である以上、与えられている役割を全うすることが大事ですから。
ですので、素晴らしい歯車になりましょう。組織の一員として生きるということはそういうことではないでしょうか。